「受け」という疑問。

套路

新型コロナ自粛期間中にふと思ったことですが・・・、

「受け」って、なんなんでしょうね・・。

一番イメージしやすいのは、空手だと思います。

上段受け(上受け)、下段受け、外受け、内受け等、相手の突きや蹴りを前腕部で受けてその攻撃をそらす、という感じのものだと思います。

私は沖縄小林流空手をやっていました(四段)ので、空手については良く知っている方だと思います。

相手の攻撃が来るのだから、受けがあって当然、と今まで何の疑問もなく思っていました。

ですが、太極拳には、厳密にいうと「受け」はありません。

なぜなら、受けると居つくからです。

受けようとする考えを持つという居付きと、相手の力を受けることで自分が物理的に受ける居付きです。

この2つの居付きで、足が完全に止まります。足が止まってしまうと、もう太極拳ではありません。

攻防の考え方の中に「受け」があると、相手の攻撃に対して、受けるのか、攻撃するのか、逃げるのか、という3つの選択肢があります。

このうち、「受け」は、攻撃でも、逃げるわけでもありません。

受けるという行為は、完全に相手を攻撃するという行為でもなく、逃げるという行為でもありません。

どこかの流派の空手には、「受けで相手の腕を破壊する」なんていう野蛮な考えがあるようですが、私の考えでは、要は最終的に相手を制すればよいのであって、破壊が目的ではありません。

ですから、相手の敵意に対して、こちらが取る選択肢は2つしかないと思っています。

攻撃するか、逃げるか、です。

少なくとも、相手が攻撃してきたのであれば、相手の敵意は明白で、こちらはそれを迎撃するか、逃走するかしかないはずです。

しかし、「受け」って、どんな行為なのでしょうか?

逃げる場面に置いてここで思いつくのは、自分に攻撃が来た時に人が取る動作と言えば、完全に頭を抱えて逃げるか、腕を前に出して「来ないで!!」ってするかです。

腕を前に出して「来ないで!!」とするこの動作が「受け」へと変化し、頭を抱えて逃げることは、完全なる逃走です。

太極拳は、後者を選びました。

その動作は、套路に入っています。

ですから、腕を前に出して相手の攻撃を受ける、という考えは、太極拳にはありません。攻撃するか、逃げるか、しかないのです。

さて、空手には、相手の攻撃を受けてからでないと、こちらから手を出さない、という「空手に先手なし」という教えがあります。

なんだか美徳のようにも聞こえる教えですが、後手で相手の攻撃を受けるのであれば、もし相手の攻撃に全く気付かずとっさに受けてしまったという場合、そこからどのようにして回避、または迎撃に転じるのでしょうか?

この問いは、簡単なように見えて実はかなり難しいと思います。空手修行者で、組手を経験している人であれば、「そんなものは反射神経と身体能力でなんとかするしかない」と思っていることでしょう。

完全に後手であれば、こちらは最初から身構えておらず、相手にも気付いていないということになります。この状況で相手の攻撃を受けるのですから、少なくともとっさの判断で反射的に体が動くことで対応するしかありません。空手の場合、型を見ても、受けるときには必ずしっかりと立つという前提条件があります。逆にいうと、しっかりと立たなければ受けられない、と言うことです。

とっさの判断で受けてしまった場合、立ち方もしっかりしておらず、どちらかと言うと「来ないで!!」といった感じの「拒否」を表すような受けをしていると考えられます。つまりただひたすら、ダメージを少なくする為、身体を攻撃されないように手を前に出す、という反射動作しかない、ということです。

「空手に先手なし」という教えに基づいて、「受け」から始めたとしても、このような完全な後手の場合、空手としての対処方法が明確に存在しないところが問題だと思います。

つまり「空手に先手なし」ときれいごとを言っても、完全に後手ではなく、相手の敵意を見抜いて、実は最初から身構えて(備えて)いる、ということを暗に示している、と言うわけです。

ということで、空手の場合、完全に後手のとき、とっさの判断だけが頼り、というなんとも頼りない結論になってしまいます。

その先にあるものは、ひたすら鬼のように練習して身に付けろ!といった根性論的な考えが見え隠れするのですが、それは私だけでしょうか?

 

この反面、陳氏太極拳では、套路動作を見ても(嫡伝の套路をちゃんと師匠から習ったら分かりますが)攻撃しかありません。太極拳の套路のほとんどは、攻撃で成り立っています。「逃げ」はありますが、少なくとも「受け」はありません。

そして、完全に後手であった場合、もちろんとっさの判断で動くしかないのですが、このときにどう動いたらよいのか、という方法論がちゃんとあります。

それは套路を習うだけではダメです。

このような先手後手での動作要領、相手との間合い、接近の仕方、戦闘の組み立て方、においてそれぞれ方法論があります。

これらを全て習って、初めて実際の戦い方を練習できるわけです。

ここがはっきり理解出来ていないと、いくら稽古したとしても陳氏太極拳は使えないですし、戦うときにいつも不安になるでしょう。

私は今まで、師匠から習うまでは、こんなことは一切知りませんでした。

ちなみに、この戦い方の方法論ですが、知っている人は、たぶんほとんどいません。

知っていたら、いろんなところ(ボクシング等の格闘技)で見られてもおかしくないですから。

まあ、知っているのと、実際に使えることでは全く違いますが、知らないよりはかなりまし・・、と言うよりは、雲泥の差!といった感じです。知っていれば、それに基づいて計画を立て練習も出来ますし、実に簡単な動作なので、一度覚えたら感の良い人であれば数日でマスターできます。

知らなかったら、出たとこ勝負でしょう。先ほど述べたように「感が頼り・・」とか、そんなもんです。

話が飛躍しましたが、まとめると、太極拳には受けが無いということです。受けなくても大丈夫なやり方があると言うことです。そしてそのほうが有利だということを套路が示しています。

「受け」が無くても、全く問題ないのです。

 

 

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