武術をやっていれば、丹田を鍛錬するというのは常識でしょう。特に下丹田を鍛える事を重視しているところは多いです。
それは足腰を鍛える意味で、四股を踏むとか、馬歩でじっとしているとか、こういった事は既に皆さんご存知でしょう。
丹田についてはネットで調べれば色々と出てきますので、一般的な事柄についてはもう知っているものとして話を進めます。
下丹田ばかり重要視することを、私は「下丹田至上主義」と言っています(よくない意味で)。
もちろん大事なところではありますし、下丹田が鍛錬されていなければ、下肢の強さや安定感が不足して大した動きも出来ません。
例えて言うと、三匹の子豚で言うところの藁の家と言った感じでしょうか。狼に壊されないようにしっかりとしたレンガの家にしたいところです(なんか変な例え…)。
大変重要な下丹田ですが、結論から先にいうと、上丹田も中丹田も必要で、上中下の全てが連携していないと、戦うどころでは無いというのが私の認識です。
下丹田だけだと動きか遅くて使えません。また下丹田至上主義の人が柔術系の技を掛ける時、上半身の力をただ単に抜いているだけとか、相手に体重を掛けて崩していくとか、そんな認識の人が多いように思います。
「力を抜く」という言葉が、一見分かりやすそうに思えますが、力の抜き加減が全く分からず、一向に技を掛けられないという人が多いのでないでしょうか。
これは中丹田が使えていない、または意識されていないからです。中丹田は首から下の胸を中心に、胸鎖関節から腕までを使う時に必須です。柔術系の技を掛ける時だけでなく、打撃の時も必須です。肩甲骨だけではありません。
上丹田は、簡単に言うと頭の動きです。速い動作には欠かせないところです。
この3つが協調して動かせて初めて、体が自由に動かせている感覚になります。
こうやって説明すると、何だかややこしくて難しく聞こえてしまいますが、本来人間が構造上持っている動き方(と思っています)ですので、誰でも出来ると私は考えています。
古流武術の場合、下丹田を強調するところはとても多いですが、中丹田、上丹田も大事であり、このように使います、と明言しているところは少ないように思います。
もし自分の動きが遅いと感じていたり、相手の攻撃に間に合わないと実感されているなら、中丹田と上丹田も同じように大事だと理解されて稽古に取り組んでみてはいかがでしょうか。
かなり速く動けるようになったり、今まで出来なかった技が出来るようになったりするかも知れません(多分、恐らく、きっと…)。