私達の稽古は、毎回、散打から始めます。
散打と言うと、一般的には空手で言うところの組手という認識だと思います。つまり試合形式の稽古ですね。
私達の場合は、ミット打ちに似た稽古の事を指します。
これには何段階かあり、最初に行うものは、出されたミットを打ったら直ぐに間合いを取る、というものです。今日はそれをご紹介します。
ミットを持つ側は、パンチングミットを両手に持ち、それをいろんなところに出します。打つ側は、出されたミットを殴っても蹴ってもなんでも良く、とにかくミットが出されたら直ぐに打ちます。
その時、ミットを持っている人は、相手に隙があれば打ち込みます。
手にはミットを持っていますので、ミットで相手の腹や胸などを素早く打ちます。
打つ側は、これをなるべく腕などで防御するのではなく、体捌きでかわすなり、間合いを取って避けるなりします。
つまり、打つ側としては、出されたミットを打って、直ぐに間合いを取らないと、ミットを持つ側から攻撃されます。打つ側は、ミットを打ったらとことん逃げる稽古になります。
このやり方ですと、ミットを持つ側は、圧倒的に有利な状況で行える事になります。これがこの稽古のメリットになります。
ミットを持つ側が圧倒的に有利なので、腕が下の稽古生でも、腕が上の稽古生に対して出来ると言うところです。
私や師範代がミットを持つのは当たり前ですが、師範代補佐や一般の稽古生でもミットを持ち、私や師範代が打つ側になれます。
もちろん何回かやらないと上手くならないですが、それも稽古の一環となっているので、稽古生全員が、ミットを持つ側と打つ側を順番に稽古する訳です。
1回の散打につき、大体1〜3分くらい行います。
結構息が切れますし、疲れます。
これを2〜3セット行います。
ただ見ていると、単なるミット打ちの稽古にしか見えず、無料体験に来た古流武術経験者の人は、「なんだ…、ミット打ちなんかやるのか…。」と思って、2回体験に来てもう来ない、なんて人もいらっしゃいました。
実はこの散打の稽古はとても重要です。
鋭貫道の組み型に関しては、師匠から教わった幾つかの具体例しかなく、それを参考にして自ら作り上げます。
組み型を考える上で最も重要な基準は、「散打の早さで動く相手に対して、この技が使えるのかどうか?」を常に検討する事です。
一般的に古流武術の型稽古は、決まった攻撃に対して技を掛けていく稽古を行うのが普通です。
「相手がこう打ってきたら、このように受けてこう動くと技が掛かる」みたいな感じです。
悪い例としてですが、これを長年稽古していると、やり方が段々と変容していき、あり得ない想定で稽古している場合が多く見られます。古流武術に取り組んで来られた方なら、ご理解出来る現象だと思います。
これを解消する方法としては、散打の稽古はとても有効です。散打の稽古を毎回行っていれば、「相手はこの早さで打ち、蹴り、間合いを取ってくるのだから、どのような技が有効か?」と常に散打に戻って考える事が出来ます。
さらに、毎回稽古を散打から開始すれば、準備体操代わりにもアップにもなります。実戦を想定した動きの練習にもなります。体力も養えます。
散打の稽古は良いことばかりですね。最短で強くなる為や、使える技を身に付ける為の稽古方法としてはとても重要なので、本当は隠しておきたかった内容なのですが、文章であればまあいいか…(←いいのか!?)、と言う事で今回公開しました。