前回の記事で、私が「合気っぽい技」と定義している動きを公開しました。
これは鋭貫道の正式な技法ではなく、私自身のこれまでの稽古経験から独自に身につけた「それっぽい技」です。あくまで私個人の解釈による技であることを、まずはご承知おきください。
実のところ、私はこうした技を「実戦技」としては稽古していません。 個人的な考えですが、実戦においてこのような技は不向きだと思っているからです。
理由は二つあります。 一つは、実際の局面では組み合うよりも打撃の応酬になる場合が多いからです。 私の師匠も「掴まれたら終わり。そこからどうするかを考えるよりも、打撃で攻撃する方が早い」とおっしゃっていました。実戦経験に裏打ちされたその教えは、間違いのない真理だと確信しています。
もう一つは、こうした技は「相手の反応」に依存する部分が大きく、反応の鈍い相手には掛かりづらいという側面があるからです。 かつて太極拳の師匠から「狂人（神経系が通常と異なる状態の人）にはこの手の技は掛からない」と聞いたことがあります。反応が正常でない相手には、術理が働きにくいということです。
以上の理由から、この「それっぽい技」をメインの稽古に据えているわけではありません。しかし、鋭貫道を学んだことで図らずも似たような事が「出来てしまった」ため、ひとつの可能性として紹介しました。
注：私は合気道や合気柔術を習っておりません。この「それっぽい技」は「合気っぽい」というだけであって、私の考えによる技の定義です。「合気」をちゃんと指導しているところでは実戦的な用法として「合気」を指導されているはずです。本物の「合気」を知りたい方はそちらをお訪ね下さい。
動画では、一瞬の崩しの後、柔術的な動きで相手を投げています。 この柔術的な動きの核となっているのが、実は「猿の突き」の動作です。
つまり、この稽古の真の目的は「猿の突きを正確に体現すること」にあります（それっぽい技は、いわばおまけです）。 正しい身体操作ができていれば、掴まれた状態からでも相手を崩すことが可能になります。
前回、「私の考える合気」の定義として以下の3点を挙げました。 ・小さな円で相手の力を返す ・見た目は小さいが掛かり具合が大きい ・技を掛けるタイミング
猿の突きで崩す場面は、より柔術的な用法を用いているため、厳密にはこの定義からは外れます。
しかし、鋭貫道の打撃はそのまま柔術的な用法に転用できるのが特徴です。 突きとして打撃の稽古をするのはもちろんですが、あえてゆっくり動かしてみる。すると、正しい身体操作ができていなければ相手は崩れません。自分の動きをチェックするために、この柔術的な稽古が非常に役に立つのです。
私は鋭貫道を継承しましたが、これまでに多くの武術を歩んできました。 それらを統合し、稽古生がより理解しやすく、より早く技術を習得できるよう試行錯誤した結果、現在の指導スタイルがあります。
これもまた、「雙武會」独自の稽古の在り方と考えております。
