昨日は、肚(正中心・臍下の一点)にクローズアップして解剖学的にどのあたりなのかを詳しく見てみました。今日は、肚と中心軸との位置関係を書いてみます。
結論からいうと、解剖学・運動力学的な観点、および武術などの観点のどちらから見ても、「身体の中心軸は、正中心(下丹田)を通る」と言え、肚と中心軸はそれぞれ独立して意識するものではなく、両方あって初めて正しく意識できるものだと言えます。
より正確に表現するなら、「中心軸という『線』が、正中心という『点(重心・交差点)』を垂直に貫いている」という位置関係になります。
物理的な「重心」を貫くという関係
直立した人間の「物理的な中心軸(重力線)」は、頭頂(百会)から足裏のほぼ中央へとまっすぐ下に落ちる垂線です。
解剖学において、人間の骨盤内(腰椎下部から仙骨にかけての前方)にある正中心(下丹田)は、身体の「総重心」にあたります。
物理の法則上、物体が安定して回転したり、軸をキープして動いたりする際、その「回転軸」や「中心軸」は必ず「重心」を通ります。したがって、中心軸が正中心を通るのは、物理的に必然のことです。
解剖学的な位置関係(どこを通っているか)
正中心(点): おへその下数センチ、背骨(腰椎・仙骨)のやや前方(お腹の奥深く)にあります。
中心軸(線): 耳の穴―肩峰(肩の骨)―大転子(股関節の横の出っ張り)のあたり―膝蓋骨の横―外くるぶしの前へと落ちます。
この「大転子のあたり」を身体の内部(断面)に投影すると、骨盤腔の内部、つまり正中心がある位置とおおよそ一致します。
インナーマッスルによる「線」と「点」の結合
1:縦の軸を作る「大腰筋(だいようきん)」
みぞおちの裏あたりから、正中心のすぐ脇を通り、股関節へとつながるインナーマッスルです。この筋肉が左右対称に正しく働くと、背骨が過度に反ったり丸まったりせず、天と地を結ぶ垂直な「軸」が形成されます。
2:点を安定させる「インナーユニット」
上を横隔膜、下を骨盤底筋群(会陰の奥)、周囲を腹横筋に囲まれた円柱状の空間が「腹腔」です。
この上下・周囲の筋肉が均等に引き締まったとき、その圧力が一番高まる中心(支点)が「正中心」になります。
身体の中心軸は、正中心という「身体の質量と圧力のセンター」を貫くように通っています。
そのため、武術や身体操作において「軸を立てる」ことと「正中心(丹田)に収める」ことは別々の作業ではなく、軸が正しく立つからこそ正中心に力が集まり、正中心が安定するからこそ軸がブレなくなるという、表裏一体の関係になっています。
逆を言えば、肚の感覚(正中心・臍下の一点)が定まったとき、中心軸も自ずと知覚されます。
ここからは私の独自の感覚です。
先ほど「肚の感覚(正中心・臍下の一点)が定まったとき、中心軸も自ずと知覚されます。」と書きましたが、この逆は無いと思っています。つまり中心軸が分かれば、正中心が定まる、ということは無い、と。
中心軸は確かに正中心を通りますが、インナーユニットの内圧がしっかりと出来てこないと、正確には知覚できないと考えています。このインナーユニットの内圧を作るには呼吸法が大事であり、そこが出来てくると肚周りが安定し、その結果、正中心の位置が知覚されるという順番です。それが知覚されない時は、肚の辺りで中心軸のどこかにある、というイメージしかできないと思います。
つまりまずは肚の感覚ができて、それから中心軸が正中心を通る、という順番だと思います。これは私の感覚であって、もちろん、異論は認めます。
自らの稽古の参考にして下さい。
