鋭貫道は「えいかんどう」と読みます。空手、柔道、合気道のように広く知られた武術ではないため、初めて名前を聞く方がほとんどだと思います。そのため、「鋭貫道とはどのような武術ですか」と聞かれることも少なくありません。
鋭貫道は、中国武術の無影拳を基礎に、流祖が長年の武術経験から培った技術を融合させて創始した、独自の徒手武術です。打撃を主体としながら、体格や筋力の差を前提としない護身のための武術として体系化されています。
一言で表すなら、鋭貫道は「速さ」と「連続した攻撃」を大きな特徴とする実戦的な護身武術です。突き、肘打ち、寸勁、蹴りなどの打撃を中心に稽古し、一撃の強さだけではなく、それを連続して出せる身体を養っていきます。
力任せに動かない武術
鋭貫道の稽古で大切にしているのは、力任せに動かないことです。大きな相手に対して、正面から力でぶつかっても簡単には通用しません。必要なのは、相手の重心や動きを読み、わずかなタイミングで内側や外側に入り、相手の動きを利用しながら次の打撃へつなげることです。
そのために、鋭貫道では馬歩と呼ばれる立ち方を重視します。馬歩によって下半身を鍛え、重心を安定させることで、素早い身体操作を支える土台を作ります。余分な力を抜き、重心が正しく置かれた状態から生まれる動きは、打撃の力を相手へ効率よく伝えます。
腕だけで打つのではなく、足、腰、胴体、腕がつながって動くこと。力を込めるのではなく、必要な瞬間に必要な方向へ力が通ること。鋭貫道では、そのような身体の使い方を稽古の中で身につけていきます。
型や定位置に頼らない稽古
鋭貫道の大きな特徴は、「型」や「定位置」を設けていない点にあります。順番を覚えることよりも、それぞれの身体に合った動きを見つけ、実際に使える形へ磨いていくことを大切にしています。
同じ技であっても、身長、体格、筋力、柔軟性、経験によって、最も使いやすい形は変わります。外見だけをそろえるのではなく、その人の身体の中で自然に働く動きを探し、稽古の中で調整していきます。
そのため、鋭貫道の稽古では、単に技を覚えるだけではなく、立ち方、間合い、重心移動、力の伝え方、相手への入り方などを細かく確認します。技術を通じて、自分の身体の癖や偏りに気づき、より自然で合理的な身体の使い方へ近づけていきます。
攻撃を学ぶことが、護身につながる

鋭貫道は打撃を主体とする武術です。突き、肘打ち、寸勁、蹴りなどを多用し、相手より先に動く「先の先」の考え方も重視します。
これだけ聞くと、「それは護身術なのか」と感じる方もいるかもしれません。しかし、護身を実現するためには、相手がどのように攻撃してくるのかを知らなければなりません。自分自身も攻撃できる身体を持っているからこそ、その攻撃に対してどう避けるのか、どう距離を取るのか、どのタイミングで離脱するのかが見えてきます。
鋭貫道では、相手を倒すことだけを目的にしているわけではありません。むしろ、相手の攻撃をかわし、必要であれば一瞬で対応し、すぐにその場を離れることも重要な選択肢です。相手を傷つけず、自分も傷つかず、できるだけ戦わない。そのための速さ、判断力、身体操作を養うことも、鋭貫道が護身に適している理由の一つです。
馬歩が生む速さと身体の蓄積
鋭貫道の稽古を続けていくと、動きそのものが少しずつ速くなっていきます。その速さは、単に手足を素早く動かすことだけではありません。馬歩を通じて下半身が鍛えられ、身体の中に力を蓄えた状態が作られることで、必要な瞬間に素早く動き出せるようになります。
馬歩が身についてくると、動きの本質が下半身と重心の安定にあることが体感できるようになります。常に身体の中に力が蓄積されているような状態が生まれるため、思った以上の速さで動くことができます。
この速さは、攻撃のためだけではなく、護身においても大きな意味を持ちます。相手の攻撃線から外れる、距離を取る、その場から離れる。そうした動作が遅れずに行えることは、自分の身を守るうえで非常に重要です。
肚、中心軸、身体感覚を養う
鋭貫道の稽古は、護身技術だけにとどまりません。肚や中心軸の感覚を養い、重心、呼吸、身体感覚を統合しながら動くことを繰り返す中で、自分の身体そのものを深く見つめる稽古にもなります。
技を覚えることと並行して、自分の身体の癖に気づくこと。余計な力が入っている場所を知ること。重心がどこにあるのかを感じること。身体が部分ではなく、全体としてつながって動いているかを確認すること。
鋭貫道では、こうした身体感覚を大切にしています。単に強くなるためだけではなく、身体と精神を長く磨き続けるための道として、稽古を積み重ねていきます。
影流刀道・古流柔術・武器術との関係

雙武會では、鋭貫道の稽古を中心に、影流刀道、古流柔術、武器術も補完的に学びます。これらは鋭貫道とは別のものを寄せ集めているのではなく、鋭貫道の身体操作をより深く理解するための稽古として位置づけています。
影流刀道は、鋭貫道の流祖家伝として継承されている剣術・居合術です。刀を通じて、姿勢、間合い、半身、体捌き、防御と攻撃を一つにする身体操作を学びます。
古流柔術では、打撃だけでは対応しにくい近い間合いでの崩し、投げ、関節技、身のこなしを学びます。相手と力比べをするのではなく、姿勢や重心の変化を利用することを重視します。
武器術では、棒、杖、短棒などを扱い、素手とは異なる距離、角度、軌道を学びます。武器を扱うことで、身体全体を一つにつなげて動かす感覚を深めることができます。
いずれも中心となるのは、鋭貫道で養う身体操作です。素手、剣、柔術、武器術を通じて、同じ身体の使い方を別の角度から確認していきます。
【影流刀道・武器術について詳しく見る】
鋭貫道を継承し、伝えていく理由
雙武會代表が鋭貫道の二代目を継承したのは、この武術の持つ可能性を次世代に残したいと考えたからです。流祖から託された思いの一つに、「犯罪被害者を減らしたい」という言葉がありました。
その言葉の重みを受け止め、護身としての内容をさらに発展させながら、鋭貫道を伝えていくことが現在の指導の軸になっています。護身とは、単に相手を倒す技術ではありません。危険を察知すること、距離を取ること、逃げること、落ち着いて判断すること、自分の身体を守ること。そのすべてを含んだ、生きるための総合的な知恵でもあります。
鋭貫道は、まだ知名度の高い武術ではありません。しかし、その分、先入観なく向き合うことができます。武術経験の有無にかかわらず、自分の身体と向き合い、護身の力を身につけ、長く磨き続けられる武術として、雙武會では鋭貫道を指導しています。
まずは体験してみてください
文章だけでは、鋭貫道の身体感覚や稽古の雰囲気までは十分に伝わりません。実際に立ち、動き、相手との距離を感じることで、初めて分かることがあります。
武術を学びたい方、護身に関心がある方、これまでの武道や格闘技の経験をさらに深めたい方、自分の身体の使い方を見直したい方は、まず一度、鋭貫道クラスをご体験ください。