雲手と倒捻肱——陳氏太極拳の地味だが重要な身体操作

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今回は、陳氏太極拳の頭套十三勢の中から、「雲手」と「倒捻肱」について解説します。

どちらも見た目は比較的地味な動作です。しかし私は、この二つの動きを理解するまでにかなり時間がかかりました。

套路の中では何気なく通り過ぎてしまいそうな動きですが、実際にはきちんとした約束事があります。その約束事を踏まえて行うと、見た目以上に難易度の高い動作であることが分かります。

また、雲手も倒捻肱も、実は非常によく使う身体操作です。少し変化させるだけで、他流派でもよく見られるような技へとつながります。それだけ重要な動きだと言えます。

雲手

雲手の手の動きを見ると、左右へ大きく腕を振っているように見えるかもしれません。

しかし、実際には腕だけを大きく振っているわけではありません。

手そのものは、ほぼ身体の幅を大きく出ない範囲で動いています。身体が左右へ向きを変えることで、その遠心力によって腕が振られ、結果として手が大きく動いているように見えます。

つまり、腕を振っているのではなく、身体の向きの変化によって腕が動かされているのです。

もちろん、手はまったく動かないわけではありません。しかし、その動く範囲は限られており、一定の枠の中で動いています。腕だけで大きく左右へ振ろうとすると、雲手本来の身体操作とは違うものになってしまいます。

また、歩の進め方にも特徴があります。

一般的には、左足を左へ進め、右足を寄せ、さらに左足を左へ進める、という動きが多いと思います。

私が習った雲手では、左足を左へ進めた後、右足を左足へ寄せる動きの延長で、そのまま少し右へ戻します。つまり、左へ進んでから、右へ少し戻る形になります。

そのため、大きく左へ移動し続けるのではなく、一回一回の動作に区切りが入ります。

もし、このような歩法で雲手を行っているのであれば、私が習ったものと同じ系列の陳氏太極拳である可能性があるかもしれません。

倒捻肱

倒捻肱では、腕の軌道と足を運ぶ位置が重要になります。

まず注意したいのは、腕を回して耳の横あたりを通し、前へ出していく時の肘の位置です。

腕を下から上げてくる時、肘は身体の前に位置します。そして手が耳の横あたりに来た時には、自分の顔の横を守るような形になります。

そこから腕を前へ伸ばしていきます。

手が耳の横にあるにもかかわらず、肘が身体の後ろ側へ引けてしまっている場合、少なくとも私が習った形としては適切ではありません。

倒捻肱は、ただ腕を後ろから回して前へ出す動きではありません。顔の横を守り、そのまま前方へ力を出していく動作です。

足の位置と後退の仕方

倒捻肱では、運足も非常に大切です。

陳氏太極拳では、弓歩の時、両足を正方形の対角に置くような形になります。

例えば右弓歩であれば、右足が正方形の右上の角、左足が左下の角に位置するようなイメージです。

空手の前屈立ちとの違いは、ここにあります。

空手の前屈立ちは、前後に大きく開く立ち方として行われることが多く、前足のつま先は前を向き、後ろ足のつま先は斜め45度に開いて立つことが多いと思います、一方、陳氏太極拳の弓歩では、単に前後へ開くのではなく、正方形の対角に足を置くような位置取りになります。

倒捻肱では、この位置に足を進めながら後ろへ下がっていきます。そのため、見た目以上に難しい動作です。

さらに、後ろへ下がる時には、踵を地面に擦るようにして足を運びます。踵を浮かせて足を後ろへ下げるのではありません。

これは、後退する時に踵が地面から離れていると、後ろに段差や障害物があった場合、つまずいてバランスを崩しやすくなるからです。

実際に試してみると分かると思います。踵を浮かせて後ろへ下がる場合と、踵を地面に触れさせながら下がる場合では、後方の確認のしやすさと安定感が変わります。

地味な動作ほど、身体全体を使う

雲手と倒捻肱の大きな注意点は以上です。

どちらも派手な動きではありません。しかし、一人で稽古する動作としては、非常に良い稽古になると思っています。

手の位置、肘の位置、身体の向き、足の運び、重心の移動、踵の使い方など、身体のさまざまな部分に意識を向ける必要があります。

最初は考えることが多く、難しく感じるかもしれません。

しかし、慣れてくると、その意識も少しずつ少なくなっていきます。最終的には、細かく考えなくても自然にこの動きができるようになることが大切なのだと思います。

太極拳の套路には、このように一見地味でありながら、武術として重要な身体操作が数多く含まれています。

雲手も倒捻肱も、ただ形をなぞるだけではなく、身体の使い方を理解しながら稽古することで、非常に深い内容を学ぶことができます。

雙武會では、厚木市・愛川町を中心に、陳氏太極拳クラスを行っています。

陳氏太極拳クラスでは、激しい対人稽古ではなく、型稽古を中心に、丹田、中心軸、重心移動、呼吸と動作の協調などを丁寧に稽古しています。

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