柔術の投げ技を一つ——技より先に、心が囚われる

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前回12日の稽古では、対人稽古で両腕を掴まれた時の対処方法を行いました。

今回紹介するのは、柔術の投げ技の一例です。比較的仕組みが分かりやすく、投げ技としても、肩を極める関節技としても成立します。

動画に映っている稽古生は、今年入会した武術未経験の初心者です。これまでの稽古で少しずつ身体を動かせるようになってきたため、今回は簡単な柔術の技に挑戦してもらいました。

動画内でも解説していますが、動作の順序を理解すると、初心者でも比較的早く形にすることができました。

投げ技の稽古は、安全な場所で行う

今回の稽古場所は板の間ですので、本来、投げ技の練習には適していません。

投げ技を稽古する場合は、必ず畳や十分な厚さのあるマットを使用し、安全を確保したうえで行う必要があります。

この技は、相手の腕を自分の肩に掛け、肩関節を極めた状態から投げる形になります。そのまま強く投げれば、相手は自分から飛んで受け身を取らなければなりません。

演武として行う場合には、投げる側が姿勢を十分に低くし、投げられる側も動きを理解したうえで、互いに呼吸を合わせる必要があります。

簡単そうに見えても、実際にはかなり難しい動作です。

互いに十分な技量がなければ、無理に行うべきではありません。

別の投げ方として、相手の腕を自分の肩から外し、身体の横で投げることも出来ます。これなら相手の懐の中で回転しながら入るその流れで、そのまま投げることができます。ただし、その場合も投げられる側が適切に受け身を取れなければ、頭や肩から落ちる危険があります。

投げ方を誤れば、大きな怪我につながる技です。見よう見まねで試すことは避け、必ず経験のある指導者の下で稽古してください。

投げなくても、関節技として成立している

この技を投げ技として紹介していますが、実際には、投げる前の段階ですでに肩関節が極まっています。

姿勢を低くしながら素早く身体を回転させ、相手の懐へ入った時点で、相手の腕は肩を支点として逆方向へ取られています。

そのため、最後まで投げなくても、関節技として十分に作用します。

むしろ護身という観点では、相手を強く投げるよりも、肩を極めて動きを止め、相手がひるんその隙に、手を放し素早く離れる方が現実的な場合もあります。

投げ技の危険性は、硬い地面に投げつけることです。相手に重大なけがを負わせる可能性があります。

護身術として考えるなら、相手を倒すこと自体を目的にせず、危険な状況から離れるための機会を作ることが大切です。

なぜ、自由な方の手を離せないのか

この動画では、もう一つ興味深いことが起きています。

相手は最初、私の両腕を掴んでいます。

私は自分の左手で相手の左手首を掴み、掴まれていた右腕を外します。そして、相手の左腕を自分の肩へ担ぐようにして関節を極めます。

この時、相手の右手は、なぜか私の左腕を掴んだままです。

実際には、相手の右手は自由です。

左腕の関節を極められる前に右手を離せば、身体を引いたり、こちらを押したり、何らかの反応をする余地があります。

しかし、最初に「相手の両腕を掴んで押さえる」と決めているため、その右手を離すことができません。

掴み続ける必要はすでになくなっているのに、最初の目的に心が囚われ、状況の変化に対応できなくなっているのです。

身体が拘束されているのではありません。

先に心が拘束されています。

これは、対人稽古をしていると非常によく起こることです。

相手を掴んだら、掴み続ける。

技を始めたら、最後までその技をやろうとする。

自分が決めた手順から外れることができない。

しかし、実際の状況は常に変化します。

最初は正しかった行動でも、次の瞬間には不利な行動になっているかもしれません。その時に必要なのは、最初の目的へ執着せず、今起きていることに応じて行動を変えることです。

「頭の中をまっさらにする」

この場面を見て、鋭貫道流祖である私の師匠の言葉を思い出しました。

「頭の中をまっさらにする」

そして、塚原卜伝先生の、

「心を新しくして事に當れ」

という言葉も思い出されます。

相手を掴むことに囚われていれば、手が自由であることにも気づけません。

覚えた技に囚われていれば、目の前の状況が変わっていることにも気づけません。

過去の判断を持ち続けたままでは、今この瞬間に対して自然に応じることができなくなります。

両腕を掴まれた時の柔術技を稽古していましたが、そこで見えてきたのは、技の形だけではありませんでした。

相手を押さえているつもりが、自分の心の方が「掴む」という考えに押さえられている。

武術では、こうした心の働きも学ぶ必要があります。

護身術として、どこまで行うのか

今回の技は、肩関節を極めながら相手を投げるため、強く行えば非常に危険です。護身術として考えた場合、最後まで投げるのは、状況によってはやり過ぎになると私は思っています。

相手の腕を逆方向へ極め、動きが止まった隙に離れる。それだけでも、危険な状態から逃れるための機会は作れます。

護身術の目的は、相手を完全に倒すことではありません。自分や周囲の安全を確保し、その場から離れることです。

技ができるからといって、必ず最後まで行う必要はありません。どこで技を止めるのか。どこまで行えば危険を避けられるのか。相手だけでなく、周囲の状況も見ながら判断する。そうしたことも含めて、護身術の稽古だと考えています。

雙武會では、技の形を覚えるだけでなく、なぜ相手が動けなくなるのか、どの段階で技が成立しているのか、そして実際の場面でどこまで行うべきなのかを考えながら稽古しています。

厚木市・愛川町で武術や護身術に興味のある方は、ぜひ一度、無料体験へお越しください。武術未経験の方や初心者の方も歓迎しています。

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