稽古とは、道場に来て身体を動かし、汗を流し、息を切らし、疲労を感じて、これで終わり、というものではありません。
稽古という時間を設けて、ある一定時間稽古することはとても重要です。しかし、それを行いつつもさらに、日常生活の中で、いつも意識して行うことも大切です。
普通の生活の中で、一番意識して稽古しやすいものは、肚と中心軸の感覚です。ただ立っているだけでも、肚や中心軸の意識は稽古できます。立っている時だけでなく、座っている時も意識するだけで姿勢は整っていきます。
他の人から見られても、ただ立っているか、座っているだけなので、稽古しているように見えないのが良い点です。
中心軸(中心線)について
中心軸とは、頭のてっぺんの百会というツボと、会陰という肛門の少し前側にあるツボを通る軸です。ちょうど人体を縦に貫くような軸になります
中心軸に関する詳しい解説は、以前書いたこちらをご覧ください。
例えば立っている時、私はいつも足底圧を意識しています。足首のあたりから足の傾きは変わりますので、たとえ重心は中心にあったとしても、足の外側(小指側)に偏っていたり、逆に母趾球側(内側)に偏っていたりする時があります。これは足が真っすぐに使われていない証拠になります。少し偏りがあると、やはり使っている側の筋肉が疲労しやすいですし、自分では全く気付かずにいてそれが癖になっていると、片側だけに痛みが生じてきたり、ひどいときには慢性化してきます。
身体は左右対称ではありませんので、偏りは出てしまうものですが、中心軸を感じるための足底圧の感覚は真っすぐ立てているかどうかの判断にはとても良いので、ここは偏りが無い方が良いと思います。
肚の意識について
正中心や臍下の一点と言われるところに意識を持っていくのですが、そこは「何もない空間」ではなく、内臓(腸管)や大血管、神経叢、そして強靭な筋肉に囲まれた、組織がぎっしりと詰まった場所です。
まずは正しく真っすぐに立てていることが前提条件となります。先ほどの中心軸が意識されていて、その中心軸が正中心・臍下の一点を通ります。呼吸も大事です。吸う時は下腹に息を送り込み、吐くときは下腹に圧を掛け膨らませたまま吐きます。吐くときに圧を抜かないことです。百会から吊り下げられているような感覚を持つと良いです。この意識を持つことで、下腹に圧を掛けていても、脊柱起立筋を強く使い過ぎないようになります。
この状態で肚の意識をすると、身体が整ってきますし、気持ちも安定します。この状態をなるべく維持するようにしています。
文字で書くととても難しいことのように思えますが、稽古していくとこれが普通にできるようになります。毎日、いつでも、朝起きたら寝るまで、気づいたらやり続けることで慣れてくるものです。
私見ですが…
こういった稽古は道場に来たからやるものではなく、普段からやり続けるものです。
かなりストイックだな、という声が聞こえてきそうですが、ボクサーや格闘家のトレーニングよりもはるかにやりやすく、息切れせず、時間も取りません。
私はこんなことをずっと続けています。
ひとつ、大切なことをお伝えしておきます。呼吸法は必ず指導者のもとで正しく学んでください。正しい方法で行わなければ効果が得られないばかりか、むやみに下腹部へ圧をかけることで、かえって健康を害するおそれがあります。
