護身術では、勝つことより離脱が大事

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護身術というと、相手を倒すための技を思い浮かべる人が多いと思います。

掴まれた手を外す。相手を崩す。投げる。関節を極める。打撃を入れる。

確かに、そのような技術も必要です。

しかし、護身術で本当に難しいのは、相手に勝つことではなく、危険から離れることだと私は考えています。

技が掛かったところで終わりではない

どの流派でも、技が終わった後には必ず「残心(ざんしん)」を行います。これは、とても大切な教えです。

ただ単に技の稽古をしていると、相手を崩したり、投げたりしたところで技が終わることが多いと思います。

しかし、大切なのはその後です。

相手の手を外した。
相手が一瞬ひるんだ。
姿勢を崩すことができた。

その時点で離れられるのであれば、それ以上技を続ける必要はありません。

それにもかかわらず、技を知っている人ほど、最後まで掛け切ろうとしてしまうことがあります。

しかし、その行動によって、別の危険が生まれるかもしれません。

相手には仲間がいるかもしれません。武器を持っているかもしれません。足元に段差や障害物があるかもしれません。

目の前の相手だけに集中すると、周囲が見えなくなります。

実際の護身では、技を掛けること自体が目的ではないのです。

戦線離脱は残心から

ここからは、離脱の具体的な方法です。

まず、相手へ技を掛けた後は、その場に留まらず、一度さっと距離を取ります。

距離で言えば、大股で2歩ほどです。

近すぎれば、相手が再び起き上がった時に、すぐ攻撃を受けてしまいます。反対に離れすぎれば、相手や周囲の状況を把握しにくくなります。

相手の攻撃がすぐには届かず、こちらは状況を確認できる程度の距離を取ります。

そして、そこで周囲を見ます。

相手が再び起き上がってこないか。
ほかに敵がいないか。
逃げられる方向はどこか。
周囲に危険な物や障害物がないか。

このように、技を掛けた後も気を切らず、次の状況へ備えます。これが「残心(ざんしん)」です。

距離を取ると、気持ちも落ち着く

残心の効果は大きいと思っています。

一つは、相手を倒した後も警戒し続けることです。鋭貫道には、それについても重要な教えがありますが、ここでは割愛します。

もう一つは、一度距離を取り、その場全体を俯瞰して観ることです。これにより、身体的な距離だけでなく、気持ちにも少し間が生まれます。その一瞬で呼吸が戻り、視野が広がります。

この時、一度冷静な自分に立ち返り、このまま戦う必要があるのか、すぐに逃げるべきなのか、助けを呼ぶべきなのかを、判断し直すことができます。

つまり、残心には警戒だけでなく、気持ちを落ち着かせる効果もあります。

近い距離で相手だけを見ている時には、状況を正しく判断できません。

一度離れ、全体を俯瞰することで、今何をすべきかが見えてきます。

護身術における勝ち

護身術における勝ちは、相手を完全に倒すことではありません。

怪我をせずに帰る。
家族や仲間を危険から守る。
争いを必要以上に広げない。
無事に自分の日常へ戻る。

それが、護身術における勝ちだと思います。

相手を倒しても、自分が怪我をすれば、完全な勝ちとは言えません。

必要以上に相手を傷つけ、その後に大きな問題が残れば、それも望ましい結果ではありません。

技は、戦いを続けるためではなく、危険から離れるために使います。

相手の姿勢を崩す。
掴んでいる手を外す。
動きを一瞬止める。

その隙に距離を取り、残心によって周囲を確認する。そして、安全に離れる。

そこまで含めて護身術です。

相手に勝つ強さよりも、そこで終わらせる強さ。

戦い続ける技術よりも、戦いから離れる判断。

私は、護身術ではこちらの方が難しく、そして大切だと考えています。

雙武會では、打撃、崩し、投げ、関節技などを稽古していますが、相手へ技を掛けることだけを目的にはしていません。

技を掛けた後に距離を取り、残心によって周囲を確認し、安全に離れるところまでを護身術として考えています。

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