これまで「まっすぐ立つこと」について、いくつかの記事を書いてきました。
中心軸の感覚、正中心の解剖学的な位置、首の力を抜くことなど、かなり詳しく書いてきたつもりです。
しかし、ふと気づきました。
姿勢と股関節の関係について、ほとんど書いていなかったのです。
過去の記事を読み返してみても、陳氏太極拳の根本となる身体操作の中で股関節の動きに触れた程度でした。
立ち方や身体操作において、股関節は非常に重要な部分です。それにもかかわらず書いてこなかったことに、自分でも驚きました。
おそらく私の中では、すでに自然な立ち方になっていたのでしょう。大切なことを書き忘れていたという反省がある一方、それほど身体になじんでいたことを、少しうれしくも感じました。
股関節には二つの状態がある
立っているときの股関節の状態は、大きく二つに分けて考えることができます。
一つは、股関節を伸ばし、脚と骨盤をまっすぐにつないで立つ状態。
もう一つは、股関節をわずかに曲げ、緩めて立つ状態です。
以前の私は、どちらが武術的に適しているのか、どちらが自然で動きやすいのかを、ずいぶん研究しました。
まず、頭のてっぺんに糸がついて、空から身体全体を吊り下げられているような感覚を作り、そのまま二つの立ち方を比べてみてください。
股関節を伸ばして立つ
股関節を伸ばして立つと、骨盤が大腿骨の上に乗って支えられているような感覚になります。
膝も伸び、脛骨の上に大腿骨がまっすぐ乗ります。膝の裏も伸びるため、外から見ると姿勢よく立っているように見えるでしょう。
このとき、私の場合は、土踏まずの最も高いあたりに重心を感じます。
股関節を緩めて立つ
次に、股関節と膝をほんの少しだけ曲げてみます。
すると、全身が一気に緩むような感覚が生まれます。骨盤は少し前傾し、上半身の重さを下腹で受け止めるように感じられます。また、地面から返ってくる力も、下腹へ伝わりやすくなります。
このときの重心は、土踏まずの前方、母指球の後ろのあたりです。
ここで大切なのは、深く腰を落とすことではありません。外見では分からないほど、股関節と膝をわずかに緩めるだけです。
股関節を緩めると、首も緩む
二つの姿勢を比べるとき、注目してほしいのが首の後ろです。
特に、僧帽筋です。首の後ろ側から付け根、肩こりを感じやすい部分までの緊張を確かめてみてください。
股関節と膝を伸ばして立つと、首の後ろにわずかな緊張が生まれます。反対に、股関節と膝を少し緩めると、首全体も緩みやすくなります。
違いが分かりにくい場合は、首を左右にゆっくり向けて、どこまで無理なく回せるかを比べてみてください。
股関節を緩めた姿勢のほうが、首を楽に動かせる人も多いと思います。
以前の記事で、首には姿勢を保つための重要な感覚器が集まっており、首の力を抜くことが大切だと書きました。
まっすぐ立とうとして首を必要以上に固めてしまうと、自然な姿勢からかえって遠ざかります。
そして、首だけを意識して力を抜こうとしても、なかなかうまくいきません。
首を緩めるためには、首から離れた股関節と膝をわずかに緩めることが大切なのです。
フワッとまっすぐ立つ方法
実際に、次の方法を試してみてください。
- 身体が空から吊り下げられている感覚を作ります。身体が軽く上に伸ばされている感覚です。
- その感覚を保ったまま、かかとを上げて、軽くつま先立ちになります。
- ゆっくりとかかとを下ろし、フワッと立ちます。
- 股関節と膝を突っ張らず、わずかに緩めます。
- 首を左右へゆっくり回し、動きやすさを確かめます。
股関節や膝を大きく曲げる必要はありません。頭は上へ伸びながら、下半身は力まず、足裏が静かに地面へなじむように立ちます。
このとき、首や肩の力が抜け、下腹で上半身を支えているような感覚が得られればよいでしょう。
「まっすぐ」は、関節を伸ばし切ることではない
まっすぐ立つとは、全身の関節をピンと伸ばし、身体を固めることではないと、私は結論付けています。
頭を上から吊られているように保ちながら、股関節と膝をわずかに緩める。そうすることで首や肩の余計な緊張が抜け、かなり楽な立ち方ができます。私はこれを「まっすぐ」と定義しています。武術における「まっすぐ」とは、外見的に直線を作ることではなく、全身が無理なくつながり、いつでも動ける状態なのだと思います。
理論については、これまでいろいろと書いてきました。
しかし実践という意味では、今回の立ち方こそ、最初にお伝えするべき内容だったのかもしれません。
こんなに大切なことを今まで書いてこなかったことに、今さらながら気づきました。


