力を入れられないから掛かる——ちょっと変わった投げ技

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今回は、ほかではあまり見かけない、少し変わった投げ技を紹介します。

これは、私が太極拳を習っていた頃に教わった技だったと記憶しています。

動画はかなり短いものです。今から8年ほど前に、技を検証するために撮影しました。

少し変わった両腕の掴まれ方

相手がこちらの両腕を掴んでくるところから技が始まります。

通常であれば、両腕を掴まれた時、掴まれる側の手のひらは下や内側を向いていることが多いと思います。

しかし、この技では、掴まれる側の前腕が上を向いています。この状態で左右の腕を掴まれています。

男性同士の争いでは、このような掴まれ方はあまり起こらないかもしれません。

一方で、女性が相手から腕を掴まれる場面などでは、状況によっては起こり得る形だと思います。

少し特殊な状況ではありますが、この腕の向きだからこそ成立しやすい技です。

技の掛け方

両腕を掴まれたら、まず自分の右手を、自分の左腕を掴んでいる相手の右手の上へ乗せます。

同じように、自分の左手を、相手の左手の上へ乗せます。

ここで相手の手を強く握り返す必要はありません。自分の手を、相手の手の上へ軽く重ねます。

その状態から、左足を後ろへ引き、身体を半身にします。

この時、足だけを先に動かし、その後から腕で相手を投げるのではありません。

左足を引いて身体の向きを変える動きと、両腕を動かして相手を投げる動作を、同時に行います。

身体の捌きと腕の動きを別々にせず、一つの動作として行うことが大切です。

うまく動作が一致すれば、それだけで相手はバランスを崩し、動画のように投げられます。

力を入れられない腕の形

この技の面白いところは、技を掛ける側が、腕に強い力を入れられないことです。

実際に同じ腕の形を作ってみると分かりますが、この状態で両腕を掴まれ、相手の手の上へ自分の手を重ねた状態では、腕力を強く発揮することができません。

腕で相手を持ち上げたり、力任せに引っ張ったりできる形ではないのです。

一見すると、力を入れられないことは不利に思えます。

しかし、この技では、それがかえって利点になります。

こちらが腕力を使っていないため、相手も強い力を感じません。

押されている、引かれている、持ち上げられているという明確な力を感じにくいため、相手はその力に対して踏ん張ったり、抵抗したりするきっかけをつかめません。

気づいた時には身体の向きと重心が変えられ、バランスを崩されています。

力がないのではなく、力を感じさせない

「力のない技」と言うと、まったく力が働いていないように聞こえるかもしれません。

しかし、実際には何の力も使っていないわけではありません。

足を引く動き、身体が半身になる動き、腕の位置が変わる動きが、一つにつながって相手へ伝わっています。

腕だけの力は弱くても、身体全体の動きは相手へ作用しています。

ただし、それが腕力として相手へ伝わらないため、相手は力の方向や大きさを捉えにくいのです。

強い力を加えれば、相手はすぐにその力を感じます。

力の方向が分かれば、踏ん張ったり、引いたり、押し返したりして抵抗できます。

しかし、こちらの身体操作が自然で、腕に余計な力が入っていなければ、相手はどこへ抵抗すればよいのか分かりません。

力で相手を動かすのではなく、相手が力を感じにくい状態のまま、身体全体の動きによって崩していく。

この考え方は、太極拳の技術にも、鋭貫道の身体操作にも通じるものがあります。

身体と腕を一緒に動かす

この技を行う際に、腕だけで相手を投げようとすると、うまく掛かりません。

腕に力が入り、相手にもこちらの意図が伝わります。相手は反射的に力を入れ、踏ん張ることができます。

大切なのは、足を引き、身体の向きを変え、その動きの中に腕を含めることです。

腕で技を掛けるのではありません。

身体が動いた結果として腕が動き、その腕に接触している相手も一緒に動かされます。

太極拳では、腕や脚を単独で動かすのではなく、身体全体をつなげて使います。

鋭貫道でも、腕力や筋力だけで相手を動かすのではなく、足運び、体捌き、重心移動を技へつなげることを重視しています。

この短い技の中にも、そのような身体操作の考え方がよく表れています。

力を抜くことの意味

武術で「力を抜く」と言うと、力を弱くすることだと思われがちです。

しかし、単に身体を柔らかくして、何もできない状態になることではありません。

余計な力を抜くことで、身体全体がつながりやすくなります。

腕だけで頑張らなくなるため、足や体幹の動きを相手へ伝えられるようになります。

また、相手にこちらの力を感じ取られにくくなります。

この技は、力を入れられない腕の形だからこそ、自然に余計な腕力を使わずに済みます。

その結果、身体の捌きと腕の動きを一致させることができれば、相手は大きな力を感じないまま崩されます。

少し変わった投げ技ではありますが、「力を入れないことで、身体全体の力が働く」という武術の面白さを、分かりやすく体験できる技だと思います。

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