腰を鍛える——身体に備わる、生きる力

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以前、ある武術団体に所属していた時、その団体のトップが、
「腰を鍛えてください。今の日本人は腰が弱い。これからの時代は、腰が強くなければいけません。腰の強さと生きる力は同じです」といったような主旨の事をおっしゃっていました。

当時の私は、その意味がよく分かりませんでした。

腰が強ければ武術も強いのだろうと、単純に受け取っていました。

それから稽古を続け、腰の鍛錬も重ねました。以前なら負担を感じていた手積み、手卸しの作業でも、腰に痛みが出ることは少なくなりました。

今でも、腰を含めた身体の鍛錬を毎日続けています。

そしてある日、友人の仕事を手伝ったことで、「腰の強さと生きる力は同じ」という言葉の意味が、はっきりと分かりました。

大工仕事の片付けを手伝う

その友人は大工です。宮大工の仕事もできるほどですから、かなり腕の立つ職人だと思います。

私はアルバイトとして、友人が行っていた住宅リフォームの現場で、片付けを手伝いました。

リフォームでは、傷んだ壁や床、建材などを次々に取り外すため、現場にはすぐに瓦礫の山ができます。それを一つひとつ運び、軽トラックの荷台へ積んでいきます。

炎天下で汗が噴き出す中、重い物を持ち上げ、歩き、荷台へ積む。その繰り返しは、想像以上に腰へ負担が掛かります。

作業をしながら、東日本大震災の被災地で瓦礫の撤去に当たった方々のことを思いました。

もちろん、私は仕事として手伝い、賃金も受け取っています。同じ状況だと言うつもりはありません。

しかし、目の前にある瓦礫を一つひとつ、人間の手で運び出すという作業には、通じるものがあります。

いつ終わるとも知れない瓦礫の山を前にして、それでも身体を動かし続けなければならない。

その時に最後に頼れるものは、自分自身の身体です。

便利になり、腰を使わなくなった

瓦礫を撤去する。

畑を耕す。

稲を植える。

家を建てる。

家を解体する。

人間は長い間、こうした仕事を自分の身体で行ってきました。

現在では、田植機やショベルカー、フォークリフト、クレーンなど、さまざまな機械があります。

私は、電気や機械に頼ることを否定しません。それらによって生活は便利になり、多くの危険や重労働から人間は解放されました。

しかし、その反面、日常生活の中で身体の力を使う機会は少なくなりました。

その一つが、腰の強さではないかと思います。

かつての日本人は、農作業や運搬、建築など、腰を使わなければ成り立たない生活を送っていました。

昔の暮らしが、現代よりもはるかに腰を使うものであったことは間違いないでしょう。

便利になった一方で、腰を含めた身体全体の力は、意識して鍛えなければ失われやすくなっています。

腰の強さは、生きる力

「腰の強さが生きる力である」

以前は、この言葉を少し大げさに感じていました。

しかし、炎天下の現場で瓦礫を運び続けた時、その意味を身体で理解しました。

友人の仕事の手伝いは、体力的にかなり厳しいものでした。それでも乗り切ることができたのは、日頃から稽古と鍛錬を続けていたからだと思います。

何もしていなければ、腰に大きな負担が掛かり、途中で動けなくなっていたかもしれません。

普段は、身体の強さを必要としない生活ができます。

しかし、災害に遭った時、山で遭難した時、車や機械が使えなくなった時、誰かを助けなければならない時、最後に頼れるものは自分の身体です。

その時、腰が強ければ、重い物を持ち、長く歩き、立ち続け、働き続けることができます。

今まで私は、腰を鍛錬することで身体が強くなり、その結果自らの武術も向上する、これが目指すところでした。つまり実戦で役立つための鍛錬として腰を鍛える、ということです。

ですが、友人の手伝いを通じて、実戦だけでなく、災害などの非常時において、かつ日常のあらゆるところでも、腰の力は常に必要だという事が分かりました。

腰の強さとは、単に重い物を持ち上げる力ではありません。

自分の身体を支え、動き続け、困難な状況を乗り越えるための土台です。

それは確かに、生命力、生きる力と言ってよいのだと思います。

腰だけを固めるのではない

ただし、腰を鍛えると言っても、腰周りの筋肉だけを固くすればよいわけではありません。

腰だけに力を入れ、無理に反らせたり、重い物を力任せに持ち上げたりすれば、かえって腰を痛めます。

武術における腰の強さとは、脚、股関節、骨盤、腹部、背中がつながり、全身で身体を支えられることだと思います。

腰は、上半身と下半身をつなぐ場所です。

足元から生まれた力を上半身へ伝え、上半身に掛かった重さを脚へ逃がす。その中心に腰があります。

腰だけを鍛えるのではなく、身体全体のつながりの中で腰を強くする。

そのような鍛錬が必要です。

陳氏太極拳には、この腰の力を養うための具体的な鍛錬方法があります。

ただ腰を低くしたり、低い姿勢で套路を行ったりするだけの単純なものではありません。股関節、骨盤、腹部、背中をつなげ、全身で身体を支えるための鍛錬です。

雙武會では、こうした身体の使い方や鍛錬方法も丁寧に指導しています。

陳氏太極拳や、腰を含めた全身の鍛錬に興味のある方は、ぜひ一度、無料体験へお越しください。

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